現在ではたくさんのCDが発売されており、音楽の本に出ている作品はまず聴けないことがありません。CDの種類が多くなっていつも思うことは、音楽評論家の仕事が増えたと言うことです。おそらく僕が20代の頃と比べて数倍は仕事量が増えたのではないでしょうか。
若い頃の僕は音楽評論家というのは好きな音楽を聴いて仕事になるなんて、なんて楽な仕事なんだろうと考えていました。でも僕も大人になってからは、音楽評論家が大変な仕事であることが分かりました。例えば3時間くらいかかる歌劇をじっくり批評のために聴くのはとても大変な仕事だと思います。僕も音楽評論家を気取ってレコードの評論をノートに書いていたことがありました。しかし引っ越しの時にどこかにいってしまいました。
当時の懐かしい音楽評論家の先生方には、村田武雄、野村光一、小林利之、志鳥栄八郎、岡俊雄などがおられました。村田武雄さんには実際にお会いしてトスカニーニについていろいろと質問をした覚えがあります。
僕は学生の頃、1日にかなりのレコードを聴いていました。しかし聴きたくてもレコードの種類があまり無く、しかも高価なのでレコードもあまり買えませんでした。CDの時代になってからは、どんな曲でもCDが発売されており、経済的にも多くのCDが買えるようになりましたが、CDを聴く時間がほとんど取れなくなってしまいました。世の中はつねに上手くいかないものですね。 白井康則