井上揚水といえばテレビに出ない歌手として有名でした。その後、「少年時代」などのヒット曲でお茶の間でも人気になりました。しかし彼がテレビに出ない頃に出した名アルバム「氷の世界」「二色の独楽」「もどり道」などはいつまでも輝き続けています。これこそ本当の揚水といえます。

 伝説のオペラ歌手であるマリア・カラスは歌劇のレコードが名演ばかりですが、1960年になるとファルセットが不自然に聴こえてしまいます。ただし、これはあくまでも僕の感想です。1964年にプレートルの指揮で歌った「カルメン」のレコードは最高の歌唱とされていますが、やはりファルセットが極端で不自然に思えます。やはり1950年代までのカラスに魅力を感じます。

 歌手を評価するのはやはり初期の最も優れていた頃の作品を聴いてみないと本当の評価は出来ないと思います。それにしてもあの美空ひばりさんは全てが全盛期で「東京キッド」から「川の流れのように」まで全然変わらないのはなぜでしょうか。

 白井康則