忘却とは忘れ去ることなり は「君の名は」ですが(「君の名は。」ではなく)、記憶したものは忘れるのが当たり前と思われています。でもこれは経年劣化ではなく、神経伝達物質の受容体が除去される積極的で正常な生理現象だとのことです(池谷裕二氏・著『寝る脳は風邪をひかない』)。この受容体を除去できなくなるように遺伝子を改変したネズミは、忘却が出来なくなりました(Deanら Science誌 2019)。そんなことが出来るのですね!
 するとこのネズミは新たな場所も覚えるのですが、一度覚えた餌の場所が忘れられず、以前の餌場も同じように探してしまうなどの不都合があったそうです。過去の記憶が鮮烈のままでは時間が凍てついてしまう、情報の遠近感から「現在」という瞬間が立ち現れるとのことです。

 私は、大変つらい経験をした方が、しばしば「そこで私の時間が止まってしまっている」と表現していることに思い至りました。

 物忘れをしたら、新しいことが覚えられると思いましょう。  篠宮正樹