NHKの「ダーウィンが来た!」で、シロアタマラングールという絶滅危惧種の猿の生態をとらえた番組がありました。地上300メートルの切り立った絶壁で、群れを作り、生活を営み、子どもを産み育てています。特にオスの宿命は過酷です。群れの中に大人のオスは一頭しかいられず、成長したオスはその群れを出て、戦闘能力を身に着け、どこかの群れのボスと命がけで戦って勝つことで、初めて子孫を残せるのです。番組は、一頭のオス猿が、赤ちゃんから群れのボスとなるまでを撮影していました。ボスになった猿は、絶壁の木の上で、自分の群れが外敵に襲われないよう、ほかのオスに取られないよう、周囲をにらみ、睥睨しています。それがボスであるなによりの印なのです。

高いと言えば、スカイツリーは634メートル、その頂上が開業10周年を迎えて初めて公開され、ここで歌舞伎の市川海老蔵が「世界の平和、コロナ禍の終息、さまざまな困難に立ち向かう全ての方々の災いを払う願いを込め」お家芸である「にらみ」を披露しました。このにらみを受けた人は、一年間無病息災で過ごせるという言い伝えがあるそうです。まるで浮世絵から出てきたような、その「にらみ」の姿に、伝統というものの圧倒的な力を感じました。
    小倉明