河合祥一郎氏の「新訳 ハムレット」(角川文庫 2003年)では、訳者あとがきに “To be, or not to be, that is the question.” についての、1874年から2003年までの43の日本語訳が紹介されています。とても興味深いものです。「存ふか、存へぬか、それが疑問ぢゃ」坪内逍遥(1907年 本邦初演)など。巷間言われる「生きるべきか、死ぬべきか、それが問題だ」はそれまで、そう訳されたことは無いことが判ります。河合氏は、観客が最も受け入れやすいこの訳を初めて(!) 43番目として採用したとのことです。先ごろ、ゼレンスキー大統領が演説でこの一節を引用した際に、これをどう訳すかが新聞で取り沙汰されていました。 戯曲の翻訳とは異なり、政治的な意図が盛り込まれるので問題は別なのですが、興味深く読みました。   篠宮正樹